司法書士試験 5択に潜む罠

今回は、司法書士試験に採用されている『5択形式』についての考察です。

5択形式について、学習に対する点数の伸び方や、危険な考え方をまとめました。

本記事は司法書士試験の受験生向けです。

・司法書士試験をこれから始める方
・一度試験を受験した方
・足切りの基準点から点数が伸びず長期化しそう(している)方

に特に知って欲しい内容になっていますので、目標や計画を立てる際の参考にしてみてください。

目次は以下です。

計算が苦手な方は計算部分を飛ばして、結論やまとめをお読みください。
また、確率の話ですので、必ずしも数字通りの結果になるとは限らないことにご留意ください。

学習の進捗と、正答率はズレる

初めに、学習の進捗と正答率との関係についてです。

一問一答の場合

全くの無勉強でも、一問一答形式の正答率は50%

例えば一問一答(〇×形式)の問題が100問あるとすると、当たり前ですが〇×形式での正答率は無勉強の人でも50%になります。(確率の話なので細かい部分は置いておいてください。)

このとき、半分を覚えたとは言えないですよね。

では勉強がすすんで、50問を自力で正解できるようになった場合には、残りの分からない50問のうちの50%が確率で正解できますので、正答率は75%になります。

これも、正答率通りの75%を覚えたとは言えないですよね。あくまで理解したのは100問のうちの半分、50%です。

確率の問題で、正答率は実際の勉強の進捗よりも常に上になるため、過信しないよう注意が必要です。

もちろん、前向きに考えて自信にするのはとても良いことです。

5択形式の場合、どのくらいズレるのか

次に、5択形式においての勉強の進捗と正答率との関係を考えていきます。

前提として、司法書士試験の問題は、以下のような5択形式であることがほとんどです。

5択の選択肢は、このようにア~オが2個ずつ組み合わされるのが恒例のパターンになっています。

そして、結論から言うと、判断できる肢の数と問題の正答率の関係は以下のとおりです。

・5肢中1肢わかる 40%
・5肢中2肢わかる 70%
・5肢中3肢わかる 90%
・5肢中4肢わかる 100%
・5肢中5肢わかる 100%

数字遊びになりますが、以下で計算を記載しておきます。不要な方は飛ばしてください。

5肢のうち1肢を判断できる場合の正答率

では、(1.アイ 2.アエ 3.イウ 4.ウオ 5.エオ)という5択問題があったとして、話を進めていきます。

仮に『正しいものを選べ』で、1.アイが正解だとします。ここから正答率を算出してみます。

  • あなたがアからオのうち1つだけ正誤判断できるとすると、

ア を〇と判断できる場合、(1.2)  に絞れるので、正答率は   50%
イ を〇と判断できる場合、(1.3)  に絞れるので、正答率は   50%
ウ を×と判断できる場合、(1.2.5)に絞れるので、正答率は 33.3%
エ を×と判断できる場合、(1.3.4)に絞れるので、正答率は 33.3%
オ を×と判断できる場合、(1.2.3)に絞れるので、正答率は 33.3%

合計(平均)すると200/500=40%です。

つまり、5肢中1肢(20%)を判断できる場合、5択形式にすると正答率は40%になります。

35問で考えると、35問×40%=14問 なので、5肢中1肢でもわかればけっこうな点数が取れるのですよね。

勉強量に対して点数が取りやすい!と喜んでしまうかもしれませんが、罠です。後ほど解説しますので、引き続き計算していきましょう。

なお、正解の肢をシャッフルしようが、『誤っているものを選べ』にしようが計算は一緒なので省略します。

5肢のうち2肢を判断できる場合の正答率

 同様に、2個判断できる場合を考えます。10通りあるので順番で見ていきましょう。

例題は同じく(1.アイ 2.アエ 3.イウ 4.ウオ 5.エオ)で、『正しいものを選べ』かつ1が正解肢とします。

アイを判断できる場合、(1)  に絞れるので、正解率は 100%
アウを判断できる場合、(1、2)に絞れるので、正解率は  50%
アエを判断できる場合、(1)  に絞れるので、正解率は 100%
アオを判断できる場合、(1、2)に絞れるので、正解率は  50%
イウを判断できる場合、(1)  に絞れるので、正解率は 100%
イエを判断できる場合、(1、3)に絞れるので、正解率は  50%
イオを判断できる場合、(1、3)に絞れるので、正解率は  50%
ウエを判断できる場合、(1)  に絞れるので、正解率は 100%
ウオを判断できる場合、(1,2)に絞れるので、正解率は  50%
エオを判断できる場合、(1,3)に絞れるので、正解率は  50%

合計で700/1000で70%です。

つまり、5肢のうち2肢(40%)判断できる1問にすると正答率は70%です。

5肢のうち3肢を判断できる場合の正答率

同様に、3個判断できる場合は10通りで

アイウ→(1)に絞れる → 100%
アイエ→(1)に絞れる → 100%
アイオ→(1)に絞れる → 100%
アウエ→(1)に絞れる → 100%
アウオ→(1,2)に絞れる→50%
アエオ→(1)に絞れる → 100%
イウエ→(1)に絞れる → 100%
イウオ→(1)に絞れる → 100%
イエオ→(1,3)に絞れる→50%
ウエオ→(1)に絞れる → 100%

で、トータルの正答率は90%になります。

3個判断できる→60%の理解→正答率は90%です。

5肢のうち4肢または5肢を判断できる場合の正答率

同様に考えていくと、4個以上の肢を判断できるなら5択の正答率は100%になります。

本試験は、確率通りにいかない

計算しておいてなんですが、本試験では、確率通りになるわけではありません。

もちろん『確率だから』というのもありますし、その他の理由は次のとおりです。

・捨て問の出題がある
・ひっかけ問題がある
・全ての肢が、きれいに判断できるできないと割り切れるわけではない
・個数問題や、正解肢を1つ選ぶ問題の出題がある
・問題ごとに未出論点が出題されることも通常であり、100%対策できるわけではない

近年は個数問題や正解肢を1つ選ぶ形式の出題は減っていますが、出題されれば組み合わせ問題よりも正答率が下がります。

また、本試験では誰も解けないような過去に出題歴のない問題が1つか2つ出されたり、ひっかけ問題が出て正答率がさがるケースもあります。

さきほど計算した確率よりは、2~3問下がると思っていいでしょう。

基準点付近からは点数が伸びにくい

先の計算をまとめると、組み合わせ問題で判断できる肢の数と正答数の関係は次のとおりです。

・5肢中1肢わかる 14問
・5肢中2肢わかる 24.5問
・5肢中3肢わかる 31.5問
・5肢中4肢わかる 35問
・5肢中5肢わかる 35問

ゼロからは1肢わかれば、14問増えます。
1肢増えて2肢わかるようになると、増える正解数は10.5問です。
さらに1肢わかると正解数は7問増えて、4肢になると、増え幅は3.5です。

実際はこんなに単純ではないものの、組み合わせ問題の性質上、勉強が進むにつれて点数が伸びにくくなるのは事実です。

さらに、捨て問や個数問題、本試験におけるひっかけ問題などの要素が加わると、ますます点数が伸びにくく感じるでしょう。

基準点くらいの点数を取れる場合と、充分な上乗せ点を取れる場合とでは知識に1.5倍~2倍くらい差がある

5肢中2肢(24.5問)と、5肢中4肢(35問)を比べてみましょう。

まず、2肢と4肢なので、正確に判断できる知識には2倍の差があると言えます。

捨て問などの事情によって、2~3問は変動すると考えると 22.5問~33問くらいの違いになるでしょう。

言いたいのは、基準点から合格までは(点数差は小さいが)実はけっこうな知識量の差があるということです。

基準点に近い点数が取れても、充分な上乗せ点が取れるようになるまでは約2倍の勉強が必要と意識すると良いと思います。

長期化するのは、基準点付近で停滞するパターンが多い

経験上、長期化する人は毎回基準点くらいかそれを超える点数を取っています

しかし、上乗せ点を取れる人が少ないです(取れていたら合格するので当然といえば当然ですが)。

言い換えると5肢中2肢~やっと3肢を判断できるくらいのレベルで停滞しています。

基準点を超える → 合格までもう少しだと考えてしまう → 本試験後の勉強開始が遅れる → 長期記憶が形成されない → 前年と同じくらいにしか持ってこれない → 落ちる → また試験後すぐ勉強を継続しないため忘れる

このループです。

確かに、基準点が取れればその年の上位20パーセントには入っているため、自信にはなります。

しかし、油断やが良くないです。ベテランほど点数しか見えなくなっている雰囲気も感じます。

長期化しているまたは長期化するかもしれない人は、基準点を超えても油断せず(点数は意識せず)、これまでの2倍以上勉強するつもりで臨めば道が開けると思います。

凡事徹底です。

ここまで来たら走り抜けましょう。

過去の自分にも早くそう伝えたかったです。

目標は5肢中5肢(最低4肢)におこう

充分に合格できるラインを目指すには、気持ちとしては5肢中5肢(最低4肢)を正確に解答できるくらいの知識を目指すと良いでしょう。

(本試験では問題ごとに未出の肢が出されることもあるため限界はありますが、とにかく正確に。)

先ほどの計算で見ると、5肢中3肢わかれば組み合わせ問題の正答率は90%になるため、基準点は充分に超えそうです。

35問×90%=31.5問

しかし、個数問題やひっかけ問題、捨て問の出題、ケアレスミスなどを考慮すると、そこから2、3問下がるとします。

すると28問ほどになり、これでは記述での上位の方の成績が求められるラインになってしまいます。

まとめ

今回は、5択について考察してみました。

この記事でのまとめは、以下のとおりです。

・正解率は高く出るため、正答率や模試の点数で進捗を測ろうとすると油断や過信になりやすい
・5択の点数は、勉強が進むほど伸び幅が小さくなる(精神的にも辛くなる)
・基準点が取れてから2倍の知識を得るつもりで勉強する

1問1答や5択の正答率は、実際の進捗よりも高い数字がでてしまうため、過信や油断になってしまいがちです。

5択の場合はなおさら、知識が増えるほど点数に反映されにくなっていくため、進んでいるのかわからず精神的にも辛く感じるでしょう。

しかし、5択は初めからそういう仕組みです。点数が伸びなくて辛いと思っても、そういうものだと認識し、辛さには目を向けずに勉強に集中しましょう。

各論点をしっかり理解し、説明できる状態にあるのかを基準にして、1つずつ確認するとよいでしょう。

数字で可視化したい場合は、一問一答として100%を目指すか、不正解の個数に目を向け、それを減らしていくように取り組むのが良いと思います。

ではまた次回(*‘∀‘)

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