こんにちは、しろです。
今回は、兼業から専業に移行するタイミングや、専業になる際の注意点を紹介します。
・兼業受験生の背中を押したい
・司法書士試験の勉強スケジュールの参考にしてほしい
そんな気持ちを込めて書きました。
記事の信頼度 司法書士しろ
・司法書士試験に6回目で合格
・兼業フルタイムで勉強を続け、合格年は3月から専業で受験し合格
・毎年得点アップに成功(下がった年が無い)
もちろん本記事で紹介するスケジュール感も、全ての人に当てはまるとは思っていません。
兼業から専業をお考えの方は、参考にしてみてください。
1年で合格したいというかたは、6年かかった人の思考として覗いてみてください。
どっちにしても、少しでも参考になれば幸いです(*’▽’)
短期合格は再現性が低い
司法書士に1年で合格する方法!半年で合格する方法!などのタイトルは、本やYoutubeでもよく見ますよね。
しかしいざフタを開けてみると、
・既に弁護士や公認会計士を取得している人だった
・本人の頭が良すぎて何を言っているかわからない
・専業に賭けるために充分な生活費を準備したあとの話だった
こんなケースがよくあります。
もちろん良い悪いの話ではありません。環境は人によって違います。
いずれにせよ再現性が低いと感じることが多いのではないでしょうか?
楽に合格する方法や魔法はありません。
「司法書士5カ月合格法」を読んでみたが
司法書士5カ月合格法は、辰巳司法研究所の超有名講師である松本先生の著書です。
商品ページにも記載されている目次だけ引用させていただきます。
序章 司法書士試験概観―受験界の常識と5ヶ月合格法の相違点―
司法書士5カ月合格法 第4番 松本雅典 著 目次より引用
本編 5ヶ月合格法
第1章 勉強法・総論
第2章 受験を志して~本試験当日までのスケジュール
第3章 受験界の2つの大きなウソ
第4章 究極のアウトプットである脳内復元が最終目標
第5章 リコレクト(Recollect法)(=思い出す方法)
第6章 択一解答時の思考法(=合格する思考法)
第7章 推理で差をつける
第8章 記述・省エネ学習法
第9章 モチベーションを高め続ける具体的思考法
第10章 予備校の利用法
第11章 改正との向き合い方
第12章 将来の司法書士(受験生)へのメッセージ
付録 4ヶ月で合格する勉強計画
松本先生のこの本を私が読んだのは、試験に合格した年(6回目)の4月初旬でした。
(現在第4版ですが、当時は初版でした。)
率直な感想はこうです。
「私が歩くことを覚え、走り、ようやく車の運転を覚えている頃、松本先生はまず飛行機のエンジンを作り、最高速で飛んでいった。」
こんな感覚でした。
私が最初から松本先生の本を読んでいたとしても、5カ月合格はまず無理だったでしょう。
もちろん、同じペースで駆け抜ける人もたまにはいるでしょう。
兼業受験生にとっても短期合格者の思考を知っておくことも大切です。
全体として再現性は小さくても、参考にできる部分は多いと思います。
兼業は長期記憶(忘れない記憶)で勝負
兼業受験生は、試験の直前にも勉強時間を増やせない場合が多いです。
同期の兼業合格者の方に話を聞くと
・試験の3日前から有休をとった
・司法書士事務所勤務で、2週間前から休みを貰えた
などのパターンが多が多かったです。有休を全く利用できない人も多いでしょう。
そんな方は、いわゆる『直前期の詰め込み』があまり使えません。
詰め込みに頼れないからこそ長期記憶(わすれない記憶)を少しずつ育てるべきだと思います。
長期記憶は『理由付け』で育てる
長期記憶(忘れない記憶)を作る基本は『理由付け』と言っていいでしょう。
松本先生は「今ある知識と新しい知識を結び付けること」と表現しており、私も勉強の本質だと思います。
トンネルを掘る作業のようなイメージがいいかもしれません。
今いる場所から新しい知識までのトンネルを掘り進み、強固なトンネルを完成させれば、その後はメンテナンスが少なくても崩れることはありません。
単純な暗記は、地図でゴール地点を確認するだけの作業です。今いる場所からはトンネルが繋がっていないため通れません(あとから思い出すのが難しい)。
普段の勉強では、無単純暗記ではなく、今ある知識から新しい知識への結びつきを意識するとよいでしょう。
具体的な方法の例は、こちらの記事でも紹介しています。
専業に移行するタイミングは、基準点を超えたときがおすすめ
個人的に、兼業から専業に切り替えて勝負を賭けるには「基準点くらいの点数(35問中24、25問くらい)を取れるようになったら」が良いと思っています。
基準点とは、択一による足切りの点数です。本試験で基準点を超えると記述の採点に進めます。
基準点は午前午後それぞれにおかれ(低いと22問、高いときは30問という年もありましたが)近年は24~26問になることが多いようです。
「基準点って簡単に言うなよ」と思われるかもしれません。
実際簡単ではないと思います。筆者が基準点を超えて記述の採点へ進めたのも4回目からです(一応2回目から惜しかったですが)。
しかし、基準点を超えてから合格まではまあまあ距離があると思います。
以下、理解度と正答数の関係を確率で見てみますね。
計算上、およそ基準点が取れるためには、実は一問ごとの5肢のうち2肢(=4割程度)が正確に判断できるだけで足ります。
組み合わせ問題においては、5肢中2肢が判断できると正答率は70%になるため、35問のうちの正答数は 35×70%=24.5問 となります。
※あくまで単純な確率の話です。
実際には、個数問題や1つの正解肢を選択する問題、あるいは誰も正解できないような捨て問も加わるため、もう少し減るでしょう。
確率の計算と、5択の注意点は下記の記事もご参考ください。
そして、合格には上乗せ点が必要です。実際には8割以上(5肢中4肢~5肢わかる)のレベルを狙うべきだと思います。
言い方を変えると、基準点を取れるようになってから、正確な知識を2倍に増やしたいです。
そのために2倍の勉強時間が必要かというとそうではありません。実際には勉強しながら効率もアップしていきますし、正解できない肢についても一定の知識は身についているでしょうし。
まとめると
・基準点を超えてから合格までは意外と距離があるため、手を緩てはいけない
・基準点くらいの点数が取れるなら、専業に切り替えて勝負する価値がある
というのが筆者の考えです。
ご自身にしか分からない部分もあるでしょうから、生活と照らしてご判断くださいませ。
初学者の方へ
初受験の方は、前向きに考えてください。5肢中2肢の知識が正確であれば、基準点くらいの勝負できるということです。
曖昧な100より正確な80の知識などとはよく言われますが、実際その通りです。特に直前期は、無理に知識を増やそうとせず、正確に固める優先度が上になるでしょう。
それと、1回で合格する方は成長が早く、基準点レベルから合格レベルまでに駆け抜ける人が多いです。
基準は自分です。周りは気にせず駆け抜けてしまいましょう。
兼業から専業になる際の注意点
専業受験生には専業特有の問題があります。
実体験も含め、兼業→専業に移行する際には以下の点に気を付ける必要があります。
・いきなり長時間の勉強はできない
・サボり癖が出る
・孤独になるためポジティブ思考が減る
対処法も含めて、順番に紹介していきますね。
いきなり長時間の勉強ができない
一つ目は、いきなり長時間の勉強ができないパターンです。
原因は主に2つあって、体力的な問題と、習慣化されていないためです。
フルタイムで仕事をしていれば、兼業時代は平日2~3時間ほどが限度でしょう。残業があればもっと少ないです。
そのため、いきなり使える時間が増えても、毎日長時間勉強することに脳と身体が慣れていません。
思っていたより集中できず、初めは計画より進まない場合が多いでしょう。
よくないのは『せっかく専業になったのに、なぜ集中できないんだろう?』などと考え、焦ってしまうことです。
専業になるとどうしても一人の時間が多くなるため、自己疑念に陥ると、きっかけがない限り正常なメンタルになかなか戻れません。
兼業から専業に切り替える際は、体力と習慣化の観点から「いきなり長時間の勉強はできない可能性がある」ことを認識しておきましょう。
サボり癖が出る
専業直後は、いきなり勉強時間は増えないと解説しました。
この時に注意したいのがサボり癖がつくことです。
特に、仕事を辞めて専業になった場合は、仕事がキツかった人ほど解放感がとてつもなく大きいでしょう。
このとき、空き時間の使い方が大切です。間違えると、せっかくの時間を無駄にしてしまう可能性があります。
『安価なドーパミン』をご存知でしょうか?
簡単に言うとスマホやYoutube、ポルノ、ゲーム、SNS、野球中継などから得られる少しの満足感です。
本来は勉強(努力)の達成感によって快感を得るべきところ、こうした簡単に手に入る刺激によって満足感を得ると、脳が焼かれ、それ以上の満足を求めなくなってしまいます。
夜更かししてしまえば睡眠時間がとれず、勉強に集中できない→またYoutubeを見る→夜更かしするといった悪循環になってしまうでしょう。
対策としては、
・専業になってもすぐに勉強時間が増えるわけではないと認識しておく(本ページをブックマーク)
・Youtubeなどはスマホごと遠ざける
・空き時間は運動や散歩などに使う。
繰り返しになりますが、専業になってもすぐに勉強時間を増やせるわけではないと認識し、できる時間から少しずつ延ばすとよいでしょう。
最初の1日が1時間でも、1日30分ずつ延ばせば2週間後には8時間になります。
空き時間は、運動に使うのがオススメです。
太陽の光を充分に浴び、疲労もあれば、夜はしっかり眠気が来るため安眠につながります。
夜更かしを回避して睡眠時間を確保でき、受験に必要な体力もついていきます。
運動中はAmazonオーディブルなどを使って勉強効率を上げる方法を探すのも良いですし、問題の解説を自分の言葉で録音して聴くのも実体験として効果的だったと思います。
聴くというより、自分の言葉で解説(録音)しようとする際に理解が深まることもあるため、一石二鳥です。
孤独になるためポジティブ思考が減る
専業の期間中は、どうしても一人になる時間が増えます。
勉強に集中していればいいのですが、不意にポジティブな気持ちが失われる場合もあるでしょう。
そうした場合は「勉強を頑張って疲れたからだな。寝よう」がいいです。
危険なのは、考えを膨らませて自分を「ポジティブでない人」と定義づけ(フレーミング)してしまうことです。
対策は、
・図書館やカフェで勉強する
・受験仲間を作る
などがあります。
ただし、カフェを利用する際は混雑状況を考え、お店の迷惑にならないよう利用してくださいね。
筆者の場合、スマホを見る癖がなかなか抜けなかったため、せっかくなので孤独への対策も含めてTwitterだけ続けることにしました。
ただしSNSは諸刃の剣です。
筆者の場合、前年度上位合格の方からスケジュールを確認してもらいアドバイスを受けるなど、孤独を紛らせつつ、たまたまうまく使えました。
しかし、SNSは見たくない情報が多いため、基本的にはやらない方が賢明だと思います。
まとめ
今回は、兼業受験生のスケジュールについての考えを紹介しました。
兼業から専業に移りたい場合、基準点を超えるようになってからが良いと、個人的には思います。
あくまで一つの考え方ですし、勉強の進捗は本人にしかわからないため、全員にあてはまるとは思いません。
参考にできる部分があれば、取り入れてみてください。
小話
(もちろん人それぞれなのですが)やってみた感想として、1年での合格や、まして5カ月で合格するというのは一般的にちょっと無理がある試験だと思いました。
もちろん、筆者も気持ちは1回目から合格するつもりでした。
試験前になぜか法律事務所の求人に応募し、履歴書に『一発で司法書士に合格します』などと書いた世間知らずはわたしです(書類で落ちました)。
勉強を開始した時点では、司法書士の仕事内容も知らなかったですし、憲法と法律の違いすら言えませんでした。(それでも働きながら4回目から択一基準点を超え、6回で合格できたことが誰かの希望になれば嬉しいです。)
1年目は、結果として午前-午後で20-19で記述に進めず。
勉強方法や集中力にも問題がありましたが、本当にただただ舐めていたというのが正直な感想です。
(主観として舐めていたが80%、試験の分量と難易度について無知だったのが20%くらい)
合格した年においては勉強の質もメンタルも充分に高まり、一発合格者にも負けないであろう力を発揮したつもりではあります。
しかし、1年目からその質で勉強できていたとしても、私は3年かかっただろうと思います。
思うのは、他の国家資格の場合、例えば看護師さんなんかは専門学校に2年通ったり、医師は6年+2年の研修が必要だったりしますよね。電気工事士さんも、専門学校で2年勉強したあと実技を含めた試験を受けたりと。
そんな中、法律資格の最高難度のひとつである司法書士が、ゼロから半年や1年そこそこ、それも仕事しながらって相当ハードルが高いのですよね。
(もちろんできる人はいるし、他の職業と単純に比較できるものではないですし、良い悪いの話でないことはお断りしておきます。)
伝えたいのは、兼業フルタイムで勉強を進める方は、とにかく気持ちは焦らないで欲しいと思います。
焦るとそれだけ脳が働かなくなり、余計に勉強が進まなくなります。せっかくこの文章を読んでいただいた方には、焦りで時間をつぶしてほしくありません。
難しいとただ煽るつもりはなく、舐めずに(そこまで舐めていたのは私くらいかもしれませんが)一歩一歩進んで欲しいと願うばかりです。
そのために出せる情報を今後も書いてきたいと思います。
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